2012-05-24

東北妄想旅行withママチャリ 5日目

朝。

思ったよりも寝坊しないで起きる。

やはり足がかなり痛いので、シャワーでほぐしつつ本日の行程を確認する。

ただただひたすらに国道17号を南下。

そのあいだには最大の難所の三国峠がある。

今日のうちに越えられるか、そうしたら群馬まで出られて、うまくすれば一日早く家に戻れる。

まだ鼻水は出るし、少し咳も出る。

でも、ま、大丈夫。

峠を経験すると平地の行程がすごく楽に感じる。

なるべく峠に入るまでの平地で時間を短縮したい。

今度はもうピックアップの車はないし、もちろんヒッチハイクもしない。

午前8時30分

二度目の峠越えに出発!!





※         ※         ※





本日は快晴。

やはりかなり暑いので水分を消費する。

しかし、何か昨日よりも進みが悪い気がする。

こう、気持ちよくペダルを漕いでも自分の予想通りの距離が稼げない。

疲れだろうか。

それもあるかもしれないが、おそらくは風だろうと思う。

向かい風が強いと思いのほか重く感じるものだ。

峠を超えるまではずっとこの向かい風に悩まされることになる。


また、僕の自転車の乗り方はほかの人とちょっと違っていて、

遅いスピードの時でも、たぶん乗っている時間のほぼ8割くらいのは立ちこぎである。

これは昔からそうで

逆に座りながらこいでいる方が疲れる。

でもだから風の影響を強く受けたのかもしれない。

それが終盤になって思わぬ形でダメージが出てくるのだけど。




※          ※          ※




新潟は、日本のテキサスだ。



なんーもかんーもが



デカイ



まず田んぼがでかい。半端じゃない。さすが米どころ。

あとなんか全部建物が縦にでかい。さすが雪国。

あとコンビニの駐車場がでかい。コンビニ本体の何倍の敷地使ってるんだ。

あとパチンコ屋がでかい。

本当にでかい。

何と比較すれば良いだろうか。

えー

新宿三丁目にあるMARUIのビルくらいあります。

本当ですよ。だって6階建てくらいあったもん。


しかし一番でっかかったのはスーパー

その名も「プラント」




でかすぎる



自転車で通り過ぎるのに5分くらいかかったよ。

スミソニアン博物館ってこんななのかな。



いるだけで半日つぶせるわ。



僕はアメリカ行ったことないけど

兄貴に聞いたテキサスの印象と似ている。


日本のテキサスだよ。

あと、朝ごはん食べたかったのにほとんどの店が11時じゃないと空いてなかった。

3時間くらいなんも食わずに走っていた。


あと、お客さんいるのに農作業に出て行っちゃうのやめよう。

お会計できないから。




※        ※        ※




峠はやはり行きよりも辛いことになった。

以前はなかったヘアピンカーブの連続にはまいった。

登坂車線がでれば降りて歩かなければいけないし、

ちょっとゆるくなったと思ってこぎ出しても強い風に押し返される。

午後2時の段階で1.5リットルのポカリスウェットが2本空になった。

峠といえどもいつかはコンビニくらいあるだろうと思っていたのが間違いだった。

一つタイミングを逃すと絶望的なくらい飲み物が手に入らない。

たまに自販機を見つけるとためらわずスポーツドリンクを買う。

もはや、お茶などでは飲んだ気がしないのだ。

水には塩分が適量含まれていないと吸収率が悪いというのは本当だ。

お茶を飲むなら一緒に干し梅を食べなきゃダメだ。




※         ※         ※




苗場のスキー場あたりが一番辛かった。

へピンカーブはまだ曲がっているからゴールが見えないが、

ひとつの街道の脇にズラッと宿が並んでいるような道は

よりその長さが強調されているようで歩いていて辛い。

あと、あれは季節的なものであの閑散とした具合だったのだろうか?

ほとんどのホテルがシャッターがしまっていたりした。

あの静かな場所にも、冬にはたくさんの人が集まるのだろうか。

雪に沈んでこそ活気の出る街なのだろう。

僕は周りの景色が圧倒的な雪の白に覆われるさまを想像した。

その時に踏みしめた無数の足跡は雪と一緒に溶けていってしまうのだろう。

あるいっときの時間だけ、人が集まって、また引いていく。

それをこの街は延々と繰り返しているのである。

毎年来る人も、もう苗場を知り尽くしているぜなんて人も、

それでもこの初夏の苗場はしらないのだろう。

よそ行きの顔をかぶる前の、素顔の苗場を。



それはもしかしたら全ての都市の宿命をギュッと凝縮してるんじゃないか。



初夏の苗場というのもなかなか

詩情のようなものが漂っていたなぁ。




※           ※           ※





大体登りの半分くらいまで来た時に、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。

明日は確か雨のはずだったが、まあ山なのでこういうこともあるかときにしていなかった。


さて、トンネルは幅が3.5mしかない。そこをトラック同士がすれ違ったりしている。

やっぱりトンネルは押して歩いている暇がない。

毎回入口で気合を入れて突っ込んでいく。


しかし、トンネルを抜けてみると、そこは土砂降りだった。

今まで暑かったのもあるので、一時的なものだろうかとも思ったがそうでもない。

仕方なくまたカッパを着て走る。


泣きっ面に蜂とはこのことだなぁとか思っていたが、不思議なことが起こった。



あれ、足が辛くない。

ぐんぐん登れる。


多分なのだけど、雨で足が冷やされたのだ。

筋肉は酷使すると熱を持って関節が動かなくなってくる。

それを冷やすことによって以前のように動くようになるわけだ。


怪我の功名だ。


しかし、気温は27度から一気に15度まで下がった。

前も見にくくなって、困難なことに変わりはない。





※         ※          ※




地獄のような登りをようやく終えて、峠の頂点にある猿ケ京温泉にたどり着いた。

この時17時。

前橋まではあと60キロ。

このペースならば今日のうちに群馬に入ってしまうことも可能だ。

そうしたら一日早く家に帰れる。

気温はすでに13度。昼から考えると寒暖の差が14度ある。

降りしきる雨。

美しい赤谷湖の景色もそっちのけで

それでも僕は気合を入れ直してペダルを漕ぎ出した。





※          ※          ※




ようやく群馬に入ったときはすごい達成感であった。

本来二日かける道のりを強行してやったかいがあった。

峠は登りを終えればあとは天国の下りだけである。

「関東は平野」と頭の中で思っていたので、もう前橋は目の前だくらいに思っていた。



だが、実はもう一つ峠が残っていたのだ。

沼田を越えて、渋川あたりだろうか。

まさかぁまさかぁと自分の考えを否定しきれない登りが来た。

もうやけくそでおりゃああと登りたいのだが、



群馬、街灯が、ない。



なぜこんなにかたくなに街灯を作らないのか。

しかもとなりには「ごうううううう」と鳴っている利根川。雨で水量が増えている。

ガードレールは50センチくらいしか高さがないから、下手をすると落ちる。

ここに来て死ぬのは嫌だ。

ママチャリのライトなんて微々たる明かりだから、

時たま通る車のライトで照らされた景色をたよりに進む。

前橋の煌々とした街明かりがふもとに見えたときは思わず叫んだが、

一向に近くなっている気がしない。

そもそも街灯が少なすぎるから、

遠くの明かりが必要以上に近く見えたのではないだろうか?

それは平野に入っても同じだった。

見えているのに、なかなか近くならないのでちょっとやきもきした。

それと、その頃からどうにも右の膝が痛くなってきた。

筋肉ではなく、膝の内部が痛んできたようだ。

早めにストレッチをしなければ。




※         ※         ※




晩飯は、豪勢に焼肉に行った。

今日は、僕は頑張ったろうと。

ご褒美だと。

ていうかもう肉が食いたくて食いたくてたまらなかった。

特に何も考えず、見えた店にそのまま入る。

割とチェーンっぽい店だったのになんでかお客さんは僕ひとりだった。

もしや不味いのか?と心配したが、そんなことはなかった。(と思う)

もはや肉ならなんでもうまい状態だったかもしれないが。

やはり、食べる量は半端じゃなく増えている。

焼肉屋は大体が2人前くらいのサイズで商品が来るが、まったく問題なし。

二人だけだったし、店員のおばちゃんと話をする。

おばちゃんの息子さんも自転車で旅に出たことがあるらしい。

息子さんは1っヶ月かけてそれこそ北海道まで回ってきたらしいが。

今回の旅を経てわかったが、観光なども兼ねて自転車で東北を回る場合は

やはりそのくらいを覚悟しておかなければならないだろう。

旅に出ているとすぐに次の旅の計画が浮かぶ。

作品を作っている時に次の作品のことをつい考えてしまうのと一緒だ。




※         ※         ※




前橋についたときは1時。

こんどもネットカフェではなく駅前の東横インに泊まる。やはりビジネスホテルの中では群を抜いて安い。

それに、今日はしっかりと寝たかった。

今日の行程は峠越えも含めで160キロ強である。

およそ16時間は自転車をこいでいたのだ。

今日のうちに前橋につけたので、間違いなく明日は東京に帰れる。

3日の行程を一日早くくりあげたのだ。

達成感が胸をいっぱいにする。

凶暴な眠気をおさえてしっかりとストレッチをする。

明日はいよいよ最終日だ。





この旅も、終わるのか。




余韻に浸る間もなく、昏倒するように眠った。




0 件のコメント: